朝、いつものように電話が鳴りました。「こちらは日本年金機構です。お客様の年金に関する未処理の手続きがあり、このまま対応されないと年金が停止される可能性があります」という自動音声。思わず「えっ?」と不安になり、案内に従って「1」を押したところ、オペレーターを名乗る男性につながりました。急かすような口調で「今すぐATMで手続きが必要」と言われ、焦ってしまったのです…。
このような経験はありませんか?もしあるなら、それはおそらく詐欺の電話だったのです。
最近、年金受給者を標的にした詐欺が急増しています。特に2025年に入ってからは、自動音声を使った新たな手口が登場し、長崎県をはじめ全国各地で被害が報告されています。詐欺師たちは「日本年金機構」や「年金事務所」といった公的機関を名乗り、巧妙な手口であなたの大切な資産を狙っているのです。
私の叔母も昨年、こうした詐欺の被害に遭いそうになりました。幸い、おかしいと感じて電話を切り、すぐに私に相談してくれたため事なきを得ましたが、「本当に日本年金機構からの電話かと思った」と言っていました。そのくらい、今の詐欺の手口は巧妙化しているのです。
最新の詐欺手口と具体的な事例
詐欺師たちはどのような手口であなたのお金を狙っているのでしょうか?主な詐欺の手口と実際の被害事例を見ていきましょう。
1. 未処理の手続きがあるという脅し
最も多い手口が、「未処理の手続きがある」と不安をあおるものです。自動音声で「こちらは日本年金機構です。未処理の手続きがあり、対応しないと年金が停止される恐れがあります」などと告げ、音声ガイダンスに従って番号を押すよう誘導します。
その後、オペレーターに繋がると「本日中に手続きが必要」などと急かされ、冷静な判断ができないうちにATMへ誘導されるのです。
長崎県の70代男性は、このような自動音声電話を受けましたが、不審に思い一度電話を切って年金機構と警察に相談したところ、詐欺だとわかりました。「あわてず確認することが大事」と男性は振り返っています。
2. 還付金があるという誘い文句
「年金の還付金があります」という甘い言葉で誘い込む手口も増えています。「手続き期限が迫っている」などと焦らせ、ATMでの操作を指示し、実際には犯人の口座に送金させるという仕組みです。
大分県の60代女性は、「国民年金の戻りがある」という電話で住所や生年月日を教えてしまいました。その後、金融機関職員を名乗る男からATM操作を指示され、結果的に約170万円を騙し取られたそうです。「公的機関からの電話だと信じ込んでしまった」と悔やんでいました。
沖縄県の70代女性も、「年金の過払い金の還付手続き」と言われてATMで操作し、80万円を詐欺師の口座に振り込んでしまいました。後になって「還付金をATMで受け取ることはない」と知り、愕然としたそうです。
3. 複数人が入れ替わり立ち代り登場する劇場型詐欺
より巧妙なのが、複数人が入れ替わり立ち代り登場する「劇場型詐欺」です。まず年金機構職員を名乗る人物から電話があり、その後警察官や金融機関職員を名乗る人物からも電話がかかってきます。複数の人物が関わることで信頼性を高め、被害者を安心させる手口です。
私の友人の父親は、こうした手口に遭遇しました。最初は年金機構職員を名乗る人物から「還付金の手続き」について電話があり、その後銀行員を名乗る人物から「還付金詐欺が多発しているので注意してください」という電話がありました。複数の人物が関わることで信頼性が増し、最終的には「安全な手続き」としてATM操作を指示されたのです。幸い、銀行の窓口で相談したことで詐欺と判明し、被害は免れました。
詐欺を見分けるポイント
これらの詐欺には、いくつかの共通点があります。詐欺を見分けるポイントを押さえておきましょう。
1. 電話の特徴
詐欺の電話には特徴があります。以下のような電話は要注意です。
- 自動音声ガイダンスで始まる電話
- 非通知や「050」で始まる番号、国際電話番号からの着信
- こちらから確認の電話をかけさせない(「担当者しか分からない」などと言う)
- 「今日中」「期限が迫っている」など、急かす言葉が多い
2. 内容の特徴
内容にも共通点があります。
- 「還付金」「過払い金」「未処理の手続き」といった言葉が出てくる
- ATMでの操作を指示する(実は公的機関がATMでの還付金手続きを指示することは絶対にありません)
- 個人情報(住所、生年月日、銀行口座情報など)を電話で聞き出そうとする
- お金を振り込む話が出てくる
実際に電話がかかってきたらどうすればいいのか?
では、実際にこのような電話がかかってきた場合、どう対応すべきでしょうか?
1. まずは電話を切る
不審な電話は、いったん切ることが最も重要です。「折り返し電話します」と言って切るか、そのまま切ってしまいましょう。相手が公的機関を名乗っている場合は、公表されている正規の電話番号に自分からかけ直して確認するのが安全です。
2. 家族や知人に相談する
一人で判断せず、家族や知人に相談しましょう。特にお年寄りは、不審な電話があった場合は必ず誰かに相談する習慣をつけることが大切です。
昨年、私の母が「年金の手続きに関する電話」を受けた際、すぐに私に電話をくれました。内容を聞いた私は詐欺の可能性を疑い、実際に年金事務所に確認したところ、そのような連絡はしていないと判明。一人で判断せず相談することで、被害を防ぐことができたのです。
3. 警察や消費生活センターに相談する
不審な電話を受けた場合は、すぐに警察や消費生活センター(188)に相談しましょう。実際に被害に遭ってしまった場合も、すぐに警察に被害届を出すことが重要です。
知っておきたい豆知識
年金詐欺に関する豆知識をいくつか紹介します。
- 日本年金機構や年金事務所が、電話でATMの操作を指示することは絶対にありません。
- 公的機関が電話で個人情報やお金の振込を求めることもありません。
- 還付金がある場合は、基本的に書面で通知があります。
- 不審な電話は、すぐに110番や消費生活センター(188)に相談しましょう。
- 最近では、LINEなどのSNSを使った年金詐欺も増えているので注意が必要です。
周りの人を守るために私たちができること
詐欺の被害者は、決して「だまされやすい人」だけではありません。誰もが被害に遭う可能性があるのです。特に、一人暮らしのお年寄りは狙われやすいため、家族や地域での見守りが重要です。
私の住む地域では、老人会が中心となって「詐欺防止ネットワーク」を作り、不審な電話があった場合にはすぐに連絡を取り合う体制を整えています。また、定期的に警察の方を招いて詐欺防止の講習会も開催しています。こうした地域の取り組みが、詐欺被害の防止に大きな役割を果たしているのです。
あなたも、家族や友人、近所のお年寄りに詐欺の手口や対策を伝えてみてください。特に以下のポイントを伝えましょう。
- 公的機関を名乗る電話でも、すぐに信じない
- 電話でお金の話が出たら詐欺を疑う
- 不審に思ったら、すぐに電話を切って誰かに相談する
- ATMで還付金を受け取ることは絶対にない
最後に
年金詐欺は年々巧妙化しており、誰もが被害に遭う可能性があります。しかし、基本的な知識と冷静な判断があれば、被害を防ぐことができます。不審な電話があったら、まず電話を切り、家族や警察に相談することを忘れないでください。
また、こうした情報を周りの人にも伝え、地域全体で詐欺に対する意識を高めていくことも大切です。あなたの一言が、誰かの大切な資産を守ることにつながるかもしれません。
詐欺師は私たちの「不安」や「欲」につけ込んできます。「年金が止まるかも」という不安、「還付金がもらえる」という欲望。こうした心理的な隙を作らないことが、詐欺から身を守る最大の防御策なのです。
冷静な判断と周囲との連携で、詐欺被害を防ぎましょう。あなたの大切な資産と平穏な生活を守るために。
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